名前?苗字? ひろやすの生き様ブログ

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本日のつれづれ no.524 〜渡辺京二『逝きし世の面影』第11章-風景とコスモス-③〜

2017.09.06  【534日連続投稿】

 

 しかし、江戸というこの特異な都市への頌として最後に引くに値するのは、やはりオールコックのそれだろう。「ヨーロッパには、これほど多くのまったく独特のすばらしい容貌を見せる首都はない。また、概して首都やその周辺の地方に、これに匹敵するほどの美しさーしかもそれはあらゆる方向に、数リーグにおよんでいるーを誇りうる首都はない」。「この首都には、ヨーロッパのいかなる首都も自慢できないようなすぐれた点がある。それは、ここが乗馬をするのに、ひじょうに魅力的な土地だということである。都心から出発するとしても、どの方向に進んでも、木のおい茂った丘があり、常緑の植物や大きな木で緑どられてにこやかな谷間や木陰の小道がある。しかも市内でさえも、特に官庁街の城壁沿いの道路や、そこから田舎の方向に向かって走っている多くの道路や並木道には、ひろびろとした緑の斜面とか、寺の庭園とか、樹木のよく茂った公園とかがあって、目を楽しませてくれる。このように、市内でも楽しむことのできるような都市はほかにない」。江戸は郊外も美しい。太刀打ちできるのはイングランドの生垣の列の美しさくらいのものだ。「東洋的な太陽がほとんど一年中、晴れた空から万物の上に光の洪水をそそぎかけて、アーチ型をなしている木々から、たえず上下に変化する模様窓格子の絵のような濃い影をつくりだしては、われわれを驚喜させる」。

 

渡辺京二『逝きし世の面影』p.444~445

 

おわり。