名前?苗字? ひろやすの生き様ブログ

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本日のつれづれ no.527 〜渡辺京二『逝きし世の面影』第11章-風景とコスモス-⑥〜

2017.09.09  【537日連続投稿】


 欧米人が讃美したいわゆる日本的景観は、深山幽谷のそれを除いて、日本人の自然との交互作用、つまりその暮らしのあり方が形成したものだ。ましてや景観の一部としての屋根舟や帆掛け船、先頭の鉢巻、清らかな河原、そして茅葺屋根やその上に咲くいちはつに至ってはいうまでもない。つまり日本的な自然美というものは、地形的な景観としてもひとつに文明の産物であるのみならず、自然が四季の景物としては意識のなかで馴致されたという意味でも、文明が構築したモスモスだったのである。そして徳川後期の日本人は、そのコスモスのかなで生の充溢を味わい、宇宙的な時の循環を個人の生のうちに内部化した。そして、自然に対して意識を開き、万物との照応を自覚することによって生まれた生の充溢は、社会の次元においても、人びとのあいだにつよい親和と共感の感情を育てたのである。そしてその親和と共感は、たんに人間どうしの間にとどまるものでもなかった。それは生きとし生けるものに対して拡張されたのである。

渡辺京二『逝きし世の面影』p.474~475

 

おわり。