2017.07.07 【473日連続投稿】
リンダウも長崎近郊の農村での経験をこう述べている。私は「いつも農夫達の素晴らしい歓迎を受けたことを決して忘れないであろう。火を求めて農家の玄関先に立ち寄ると直ちに男の子か女の子があわてて火鉢を持って来てくれるのであった。私が家の中に入るやいなや、父親は私に腰掛けるように勧め、母親は丁寧に挨拶をしてお茶を出してくれる。・・・最も大胆な者は私の服の生地を触り、ちっちゃな女の子がたまたま私の髪の毛に触って、笑いながら同時に恥ずかしそうに、逃げていくこともあった。幾つかの金属製のボタンを与えると・・・『大変有り難う』と、皆揃って何度も繰り返してお礼を言う。そして跪いて、可愛い頭を下げて優しく微笑むのであったが、社会の下の階層の中でそんな態度に出会って、全く驚いた次第である。私が遠ざかって行くと、道のはずれ迄見送ってくれて、殆ど見えなくなってもまだ、『さようなら、またみょうにち』と私に叫んでいる、あの友情の籠った声が聞こえるのであった」。
渡辺京二『逝きし世の面影』p.79
ここで登場するスイス通商調査団に団長リンダウは、他にもこんなことを言っている。
「この民族は笑いの上戸で心の底まで陽気である」
「日本人ほど愉快になりやすい人種は殆どあるまい。良いにせよ悪いにせよ、どんな冗談でも笑いこける。そして子供のように、笑い始めると理由もなく笑い続けるのである」
渡辺京二『逝きし世の面影』p.76
おわり。