2018.03.26 【735日連続投稿】
生きていくことは、たぶん誰にとっても行きがけの道なんですよ。立派な人にはまた特殊な見え方があるかもしれないけど、僕ら普通の人間は、悟りを開いて帰りがけになるなんてことはまずないんだってことが自分でわかっていれば、まずそれでいいんじゃないか。人は誰しも行きがけの道を行く。そうして迷いながら、悩みながら、ただただ、歩きに歩いていくうちに、ああ、これこそが自分の宿命、歩くべき道だったんだと思うことがあるんじゃないか、「命なりけり」と気づく時がくるんじゃないか。
やりたいこととやるべきこと、どっちをやればいいのかなんてわからないんですよ、きっと。いつまで経っても。その時その時悩んで、考えて、考え抜いて選択するほかはない。どっちがいいかはわからないまんま、また、その先を行く。
だけど、そうすると、いつか、「ああ。これが自分の宿命だったんだ」「これが自分の歩くべき道だったんだ」と思うこともあるかもしれない。「命なりけり」と思える日がくるかもしれない。そういういつかを頼みにして、ただただ歩き続ける。そういうものなんじゃないでしょうか。
吉本隆明『ひとり』p.50
おわり。