名前?苗字? ひろやすの生き様ブログ

「ひろやす」と聞いて、名前だと思われる方が大半です。

本日のつれづれ no.906 〜夏目漱石『草枕』より〜

2018.10.19  【939日連続投稿】

 

 山路を登りながら、こう考えた。

 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかく人の世は住みにくい。

 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる、どこへ越しても住みにくおいと悟った時、詩が生まれて、絵が出来る。

 人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもなでない。やはり向う三軒両となりにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう、

 越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という転職が出来て、ここに画家という使命が降る、あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするが故に尊い

 

おわり。