2020.06.07 【1535日連続投稿】
ぼちぼち読み進めている『知の編集術』(著:松岡正剛)のなかで、時々登場する「編集稽古」。
第6弾は、絵が必要だった為飛ばさせていただき、第7弾をいかせていただきます。
【編集稽古】07
ここに世界文学の名作を要約した文章がある。そのタイトルを当てるとともに、この予約について意見を述べてみて欲しい。ただし登場人物の名前はABCなどに書いてある。引用は『新潮世界文学辞典』(新潮社)の中野好夫氏の解説より採った。
原話はイタリア小説にある。ヴェニスの将軍であるアフリカの黒人Aは、武勇の魅力で元老院議員の娘で子供のようなBの愛をえて妻にする。だが、青年将校で旗手であるCが深く彼に含むところがあり、その復讐に、ありもせぬBの不貞を、さも事実であるかのようにAに思い込ませる。猛将であるが単純な彼は、みごとにこのCの狡知の餌食になり、無垢のBを疑って嫉妬のあまり寝室で扼殺する。Cの姦計も露れるが、時既におそく、Aも悔恨のうちに自殺して果てる。(注・改行は筆者による)
この文章は登場人物の人名があれば、ほとんど誰にもわかるようになっている。が、ここではその人名を記号になっている。そうすると、手がかりは突如として、文中のさまざまな言葉にひそむことになる。
そこで連想が動く。そして頭の中の「知」が次々に動員される。ふーん、ヴェニスの将軍で、アフリカの黒人か、うーん、誰かな。妻のBは殺されるのか。うん、そういう物語は覚えがあるぞ。しかしイタリアの小説が元はということになると、ちょっと待てよ、えーっと、えーっと。このように思い出してみようとすると、頭の中のようやく感覚が連想と密接に関係しあって進んでいることが、なんとなくだがわかってくるのではないだろうか。
実はこの問題の答えはシェイクスピアの『オセロー』である。つまりAはオセロー。ではBは思い浮かんだろうか。デズデモーナである。すぐに浮かんだとすれば、それはどの格納庫から引っぱり出されたのだろうか。ではCは?Cの名前は伏せておくことにしよう。巻末を見られたい。
かくして、多くのジャンルにおいて、多くの人々によって、かついろいろな場面において、要約法と連想法が駆使されていることはまちがいない。ただし、どのような要約法や連想法が有効なのか、また、もともとどのように要約法や連想法が成立しているかというと、それはあまりはっきり解説されてこなかった。
そこで、編集術にとっても重要な2つの方法を入門的に紹介しておこうと思う。まず要約法を説明して連想法については話の都合でしばらくあとまわしにする。
松岡正剛『知の編集術』p.96〜98
そもそも、シェイクスピアのオセローは読んだことがない私だが、かなり連想しながら本文を読んでいる。
また、この本自体もかなり連想しながら読まされている感覚がある。
今後の展開が楽しみである。
【本日の晩酌】
休肝日。
おわり。