2019.01.26 【1036日連続投稿】
昨日の続きです。
なぜ、そんなことが起こるのでしょう。
それは太郎冠者が主人を内心では侮っているために、自分よりも愚鈍であるはずの主人に自分の下心が見抜かれているという可能性を認めるわけにゆかなかったからです。主人は自分より愚鈍であって「欲しい」という太郎冠者の「欲望」が、怜悧な彼の目をそこだけ曇らせたのです
こうして、「『太郎冠者が何ものであるかを主人は知っている』ということを太郎冠者は知らない」という構造的無知が成立することになります。これが「抑圧」という機能の魔術的な仕掛けです。
この無知は太郎冠者の観察力不足や不注意が原因で生じたのではありません。そうではなくて、太郎冠者はほとんど全力を尽くして、この無知を作り出し、それを死守しているのです。
無知であり続けることを太郎冠者は切実に欲望しているのです。
おわり。