2017.06.11 【447日連続投稿】
対話において語っているのは「第三者」です。
ということについて書きました。
本日のつれづれ no.441 〜内田樹『先生はえらい』(前未来形で語られる過去)より〜 - 名前?苗字? ひろやすの生き様ブログ
今日は、同書の中で、作家の村上春樹さんの場合は、その第三者が「うなぎ」というユニークな表現をされている部分があったので紹介したいと思います。元々は、『柴田元幸と9人の作家たち』(著:柴田元幸)から引用した一部です。
村上春樹:僕はいつも、小説というのは三者協議じゃなくちゃいけないというんですよ。
柴田元幸:三者協議?
村上春樹:三者協議。僕は「うなぎ説」というのを持っているんです。僕という書き手がいて、読者がいますよね。でもその二人だけじゃ、小説というのは成立しないんですよ。そこにうなぎが必要なんですよ。うなぎなるもの。
柴田元幸:はあ。
村上春樹:いや、べつにうなぎじゃなくてもいいんだけどね(笑)。たまたま僕の場合、うなぎなんです。なんでもいいんだけど、うなぎが好きだから。だから僕は、自分と読者との関係にうまくうなぎを呼び込んできて、僕とうなぎと読者で、三人で膝を付き合わせて、いろいろ話し合うわけですよ。そうすると、小説というのがうまく立ち上げってくるんです。(・・・)
必要なんですよ、そういうのが。でもそういう発想がこれまでの既成の小説って、あんまりなかったような気がするな。みんな読者と作家とのあいだだけで。ある場合は批評家も入るかもしれないですけど、やりとりが行われていてそれで煮詰まっちゃうんですよね。そうすると「お文学」になっちゃう。
でも、三人いると、二人でわからなければ、「じゃあ、ちょっとうなぎに訊いてみようか」ということになります。するとうなぎが答えてくれるんだけど、おかげで謎がよけいに深まったりする。そういう感じで小説を書かないと、書いていても面白くないですよ(笑)。
ここで村上春樹さんがおっしゃる「うなぎ」というのは、昨日の記事でいう「第三者」のことなんです。自分と読者との関係を何度も何度も深めていくことで、うなぎという自分のようで自分ではない存在が生まれてきて、以前の自分とは別の視点に立って小説を書くことができるということなのではないかと思います。
それにしても、「うなぎ」というところを使うのがユニークですねぇ。
おわり。